鬼灯の書楼

温泉マーク発祥の地へ|『舌切雀のお宿』と昔話をたどる、子連れ磯部温泉宿泊記

群馬を旅した一日目。今夜のお宿として向かったのは、磯部温泉にある「舌切雀のお宿」でした。

名前を聞いたときから、少し気になっていたお宿です。

舌切り雀といえば、誰もが一度は耳にしたことのある昔話。そして、このお宿がある磯部温泉は、あの見慣れた「♨」温泉マーク発祥の地として知られる場所でもあります。

さらに現地へ着いてみると、館内の案内看板や人形劇の中で、この地が「舌切り雀発祥の地」として紹介されていました。

温泉宿へ泊まりに来たはずが、昔話の由来までたどることになるとは。

「舌切雀のお宿」という名前も、ただ昔話をモチーフにしただけではないようです。

昔話と温泉の歴史が残る土地に建つ、「舌切雀のお宿」。月詠堂としては、少々気になる旅の一夜となりました。

温泉旅館を思わせる和の庭
旅館の庭を思わせる風景。Photo by David Emrich / Unsplash

駐車場へ着いたところから、お宿時間のはじまり

車で到着すると、駐車場にはスタッフの方がおられました。

荷物を運ぶためのカートも用意されています。

小さな子どもを連れた旅では、これがありがたい。

子どもの荷物、大人の荷物、そのほか旅先でなぜか増えてゆく細々としたもの。車を降りたところから運ぶものが多いので、すぐに使えるカートがあるだけでもずいぶん助かりました。

チェックインもとても簡単です。

用意された紙を見せて名前を記入すれば、手続きはほぼ終了。

長い手続きに子どもが飽きる間もなく、お部屋へ向かうことができました。

お庭とお部屋。温泉宿らしい、ゆったりとした時間

お宿そのものも良かったのですが、印象に残っているのが中庭(ガーデン)です。

館内を歩いていて、ふと外へ目を向けると庭がある。観光地を次々と巡る旅の途中だからこそ、お宿へ戻ってから眺める緑には少しほっとします。

お部屋も気持ちよく過ごせました。

何か特別なことをしなくても、お部屋に荷物を置いて、温泉へ行って、ご飯を食べて、また戻ってくる。そんな「宿で過ごす時間」そのものを楽しめるお宿でした。

お宿の中では、舌切り雀の人形劇も

そして「舌切雀のお宿」の名のとおり、館内では人形が動く舌切り雀の人形劇も楽しめました。

人形たちが動き、物語が語られ、その中でこの土地と舌切り雀とのつながりも紹介されます。

ただ昔話の名前が付いているだけではなく、お宿の中そのものに、舌切り雀の物語が残されているように感じられました。

温泉とも、お食事とも違う、この宿ならではのお楽しみです。

温泉は、やわらかく「攻撃性の低い」お湯

そして肝心の温泉。こちらは、とても好きなお湯でした。

現地の案内では、あせもなどへの効能も掲げられていました。

実際に入ってみると、とても湯あたりがやわらかい。

温泉には、ときどきあります。「効きますぞ」と言わんばかりに、身体へぐっと主張してくるお湯が。

それはそれで温泉の醍醐味なのですが、こちらは反対。刺激の強さをあまり感じず、ゆっくり浸かっていられました。

月詠堂の言葉で表すなら、攻撃性の低い温泉。

もちろん、褒め言葉です。

旅で少々くたびれた身体を、お湯が静かに包んでくれる。子どもを連れてあちらこちらへ歩いた一日の終わりには、こういうお湯がとても心地よく感じられました。

夕食で覚えているのは、「出汁がおいしい」

夕食は御膳でいただきました。

いろいろなお料理が並んでいましたが、帰ってからも妙に覚えているのが、出汁のおいしさ。

特に茶碗蒸し。

華やかな食材だけではなく、ひと口食べて「あ、出汁がおいしい」と思える。こういうお料理は、あとから思い出します。

量もきちんとありながら、ただ大量に並べるという感じでもなく、最後までおいしくいただけました。

そして大人には、お酒の飲み比べセットも。こちらもおいしくいただきました。

温泉へ入り、お料理をいただき、少しずつお酒を飲む。温泉宿へ来たなあ、と思う時間です。

QRコードだけは、なぜか読み込めず

ひとつだけ「あれ?」となったのが、お食事会場に用意されていたQRコード。

我が家では誰のスマートフォンを使っても、なぜかうまく読み込むことができませんでした。端末を替えて試してみても駄目。

ここだけは少々困りました。

宿泊中に大きく気になったところはほとんどなかったので、逆にこれだけ妙に覚えています。

海外のスタッフさんも多く、ちょっとした異文化交流

館内では、海外出身と思われるスタッフの方々もたくさん働いておられました。

お食事や館内で言葉を交わすこともあり、群馬の温泉宿へ来たところで、思いがけずちょっとした異文化交流です。

昔話「舌切り雀」の世界を大切にしているお宿の中で、いろいろな国の方が今のお宿を支えている。古いものと新しいものが同居しているようで、これもなんだか印象に残りました。

朝食は、おにぎり茶漬けがおいしい

夕食と朝食は、同じお食事会場でいただきました。

場所を覚え直さなくてよいので、子ども連れには分かりやすいところです。

そして朝。おすすめしたいのが、おにぎりのお茶漬け。

前日の夕食をしっかり食べたはずなのに、朝になるとこれがまたおいしい。さらさらと食べられて、旅の二日目を始める朝ごはんにぴったりでした。

そして我が家として、とてもありがたかったのが――牛乳がある。

大人だけなら小さなことなのですが、幼い子どもとの旅では「いつもの飲み物がある」というだけで助かることがあります。

豪華な朝食の中に、ちゃんと子どもが飲める牛乳がある。我が家にはうれしい一品でした。

お食事と温泉の時間は、最初に確認を

お食事や温泉は、それぞれ利用できる時間が決まっています。

チェックインを済ませたら、「何時にご飯へ行く?」「その前に温泉へ入る?」と、最初に一日の終わりの予定を確認しておくと安心です。

子どもと一緒の場合は、大人だけの旅行以上に時間がずれやすいもの。お部屋へ着いたら、まず利用時間を確認してから動くのがおすすめです。

女将の旅帳|また泊まりたいと思えたお宿

旅から帰って振り返ってみても、こちらのお宿には良い印象が残っています。

お庭よし。
お部屋よし。
温泉よし。
ご飯よし。
お酒もよし。

そして、出汁がうまい。

館内の看板や人形劇で舌切り雀の物語に触れ、温泉マーク発祥の地でやわらかなお湯に浸かる。翌朝には、おにぎり茶漬けをいただいて、また旅へ出る。

観光地を巡るためだけの「寝る場所」ではなく、宿にいる時間そのものが旅の一部になるお宿でした。

昔話や土地の小さな物語が好きな方。刺激の強すぎない温泉でゆっくりしたい方。そして、お出汁のおいしいご飯が好きな方にも。

群馬を旅するとき、また立ち寄りたいと思える一軒です。

有紀 中谷

心を休め、明日へ帰るためのデジタル旅館「月詠堂」の女将、月夜千冬星です。 タロット・数秘・星読みを通して、迷いや不安を抱えた心にそっと灯りをともします。 ここでは、占いのこと、心地よく暮らすための読み物、月詠堂に集う人々や日々の物語を綴っています。 どうぞ今夜も、ごゆっくりお過ごしくださいませ。

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